遠隔医療

心臓血管外科(クラウド医療)

心臓血管外科分野、特に大動脈解離など急性大動脈疾患等の治療は専門性が高く、限られた医療機関でなければ対応が難しい現状があります。また発症後の時間経過に伴う死亡率は1時間あたり1~2%上昇するといわれており、発症から治療開始までの時間をいかに短縮できるかが重要となっています。そこで、二次医療圏を超えて当院に救急搬送されてくる救急患者の画像情報を患者到着前に把握する目的で、クラウドとモバイル端末を用いた救急医療連携システムを構築しました。

システムの概念図は【図1】の通りですが、手術チームである外科医、麻酔医、臨床工学技士、看護師、搬送元医師、そしてその時院外にいる外科医もふくめてモバイル端末によるSNSグループを構成することにより迅速に診療連携できる体制を構築しました。SNSには公開型のパブリックなものではなく、DICOMビューアーを装備し【図2】、かつ安全面から推奨されている医療専用の非公開型プライベートSNSを採用しました【図3】。

【図1】クラウド型救急連携システム構成図
【図1】クラウド型救急連携システム構成図
【図2】DICOMビューアー例
【図2】DICOMビューアー例
【図3】SNSメッセージチャット例
【図3】SNSメッセージチャット例

定量効果測定指標を、患者の当院到着から手術室入室までの時間としましたが、患者搬送中に画像診断することで術式決定や事前の手術準備を行うことができるようになり、システム導入前と比較して約1/3に時間短縮を実現することができております【表1】。また画像診断による救急トリアージができることで、全救急搬送要請症例のうち20%の症例が救急搬送回避という結果となりました【表2】。医療資源の有効活用、患者の負担軽減、および医療費削減につながる成果といえます。

また、参加医療従事者へのアンケート結果から、定性的効果として多職種連携における情報共有効果が報告されています。従来の電話連絡にSNS連携を加えることで、連絡洩れや遅れ、無駄なコストの低減につながるばかりではなく、インシデント・アクシデント防止の効果も期待されています。

【表1】連携病院からの救急搬送・手術症例一覧(2016年9月-12月)
【表1】連携病院からの救急搬送・手術症例一覧(2016年9月-12月)
【表2】連携病院からの相談症例一覧(2016年9月-12月)
【表2】連携病院からの相談症例一覧(2016年9月-12月)

以上より、クラウドとモバイル端末によるSNS連携は、リアルタイム型と非リアルタイム型の良さを併せ持つ優れた遠隔医療システムになりうると考えています。

現在、この旭川医大方式を学会理事会に提案して全国8地域で全国展開することになりました。臨床エビデンスを収集することで、将来的な診療報酬請求制度化を学会を通して提言していくことを目標としています。

旭川医科大学 外科学講座 血管・呼吸・腫瘍病態外科学分野
教授  東 信良
2018年7月26日