旭川医科大学病院遠隔医療センター

Asahikawa Medical University Hospital

Telemedicine Center

遠隔医療タイトル画像

遠隔医療

Telemedicine

各診療科等の取り組み

眼科

北海道、特に地方での眼科医不足は深刻です。医師が定期的に出張診療を行い、また、患者も遠方まで通院しなければならないなど、人が動く事によって医療が維持されているという現状があります。そこで当院眼科では、1994年から、「情報を動かすことで人が動かなくても良い」遠隔医療システムの開発と実践に取り組んでいます。

眼科で実践している遠隔医療にはさまざまな形態がありますが、ここでは、(1)通院中に行う遠隔相談・遠隔診療支援(2)退院後のフォローアップとして行う遠隔術後管理・遠隔在宅医療支援(3)医師の教育、について説明します。

眼科が実施する遠隔医療の全体概念図
旭川医科大学病院眼科が実施する遠隔医療の全体概念図

(1)遠隔診療支援

遠隔診断支援システム

このシステムは、地方病院で診断・加療が難しい症例に対する相談依頼に対し、当院の各専門分野の医師が遠隔からリアルタイムに診察を行い、診断ならびに治療方針について支援し、担当医と一緒に検討することを目的としています。

病院間は、光回線によるTV会議システムで接続されており、地方病院診察室の眼科用検査装置(スリットランプ)の映像を伝送することにより当院医師が地方病院の患者を直接、診察・診断することができます。

当院では、研究開発や実践を通して、対面診療と遜色ない品質を保つ画質、通信の技術、ノウハウを蓄積してきました。これによって、患者が地元で専門的医療を受けられるケースが増えており、患者の時間的損失や経済的負担の軽減、地域間の医療格差の解消に貢献しています。

眼科の遠隔診療支援(支援側) 眼科の遠隔診療支援(支援依頼側)
当院の眼科専門医(写真左)が遠隔医療システムを用いて地方病院の眼科医(写真右)を支援
遠隔相談システム

遠隔医療センターに設置されたサーバを介して、当院眼科と道内の関連病院眼科はネットワークで接続されています。インターネット回線を用いた遠隔相談システムは、当院が独自に開発したSNS(Social Networking Service)であり、日常的に医師同士による症例相談が行われています。相談の上、日時を決めてリアルタイム遠隔診察を行なったり大学病院へ紹介するなどのトリアージや、自院での診療を行なうため疾患毎の専門医のアドバイスを得て迅速かつ正確な治療方針を立てることに役立てています。患者個人を特定できる情報が含まれる場合は、セキュリティが確保されたVPN(Virtual Private Network)回線を通して共有しています。

(2)退院後フォローアップ

遠隔術後管理

手術・入院加療後に専門的な術後管理を必要とする場合、退院後しばらくの間は当院への通院が必要となったり、地方の患者の場合は在院日数を伸ばさざるを得ないケースもあります。患者の通院負担の軽減や、地元の主治医のもとでも専門的な術後管理を行えるように、VPN回線を通じた検査情報の共有とリアルタイム遠隔診断支援システムを用いて当院の執刀医が同時に診察を行っています。術後、早期に地元病院への紹介が可能となり、当院への退院後の受診回数を軽減させることができ、患者の時間的・金銭的負担を軽減する効果があります。また、地元にいながら継続して当院の執刀医の診察を受けることによる患者の安心感の向上にも役立っています。

検査情報の共有
検査情報の共有
遠隔在宅医療支援

当院での在院日数を短縮して患者が早期に社会復帰できるように、自宅療養中の患者を支援する家庭用情報端末を開発し、退院後もフォローアップできる遠隔在宅医療支援システムを構築しました。患者は、自宅で測定したバイタルデータをこの端末から簡便に自動送信でき、そのデータを当院の医師や地元病院の主治医が随時モニタリングすることができます。また、簡易的なセルフチェック機能、ビデオメール機能やTV電話機能を備えており、医師に自覚症状や不安な点などを伝えることができます。

遠隔在宅医療支援(眼科病棟)
遠隔在宅医療支援(眼科病棟)

(3)医師の教育

遠隔勉強会、症例ライブラリ

旭川医科大学眼科遠隔医療のもう一つの柱は、医師教育ツールとしての活用です。遠隔相談システムを介した通信の記録は、相談された症例に対する診断および治療方針決定までのプロセスを記録したものであり、そのまま活きた医療教育の教材となります。そこで、相談症例毎にバックナンバーとしてまとめたものを「ライブラリ」として蓄積し、会員が閲覧できるようにする遠隔医療教育システムを作成しました。

症例の勉強に役立つのだけでなく、過去の症例と類似の症例に対しては、参照すべきライブラリの番号を連絡し、確認してもらう事で説明の手間も省け経過の予想もつきやすいという利点があります。また、手術手技に関する動画も残されているため、手術の際にも役立っています。

さらに、遠隔相談システムに研修医を対象とした「勉強会」メニューを新設しました。この勉強会では、眼科指導医・専門医が日本眼科学会「専門医試験」を念頭に臨床問題を出題し、参加者は期限内に解答をネット上にアップロードして答えるものです。各参加者からの解答は、匿名で全ての参加者に公開され、出題者はこれらの解答に解説を加えながら解答する形式をとっています。大学外の離れた研修病院に派遣されている研修医への臨床研修や、遠隔システムを用いた医局セミナーの地方病院への伝送などに役立っています。

遠隔勉強会
遠隔相談システムを活用した遠隔勉強会
手術映像伝送

地方病院の手術室に遠隔診断支援システムを設置して、手術顕微鏡からの映像をリアルタイムに当院へ送り、当院医師からの指導を受けることが出来るだけでなく、当院での手術映像を患者の地元病院と共有して患者の家族や主治医が視聴できる取り組みも行っています。経験の浅い若手医師を遠隔からサポートすることで地方でも難易度の高い手術が行えるようになり、また医師への実技指導や研修医教育にも役立っています。

効果

遠隔相談システムに寄せられた症例相談(219件)の結果を分析すると、全体のうち86%は地元で医療が完結しており、81%は遠隔医療支援のみで解決できていることがわかります。従来であれば、これらの症例の多くは当院もしくは他院への紹介を選択していたと思われます。この分析結果から、遠隔医療を活用することで、どこに住んでいても安心して医療が受けられる体制を整備することができると考えています。

眼科遠隔診断支援の効果
眼科遠隔診断支援の効果

更新:2015年05月26日

旭川医科大学医工連携総研講座

特任教授(眼科指導医) 石子 智士

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